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Tumblrから連想した「情報量不変の法則」という概念で低価値な情報の氾濫を防ぎたい

@rkanbe です。

この3年Tumblrをじわじわと使っていて、ふと気づいたことがありましたので駄筆ながらエントリに上げてみます。簡単に書けば、ウェブやネットワーク上の情報との向き合い方を考え直すことで、ウェブから価値の低い情報を減らしませんか?という投げかけです。

情報の「新しさ」ってなんだろう?

私たちは毎日新しい情報に出会い、それに反応し、頭の中にとどめ、ときには記録に納めようとすらします。しかし、情報そのものに新しさや古さというものは本当に存在しているのでしょうか。もちろん「過去に起きた出来事」を古い情報と呼び、最近起きた出来事を新しい情報と呼ぶことは間違ってはいないでしょう。でも実は、「最近起きたこと」がそのまま「新しい情報」ではないのではないかと思うのです。

もちろん、人間の記憶は薄れてしまうので、それを再度目の前に持ち出せば「新しい」と思うかも知れませんし、その断片でも更新されていれば「新しい」ことになるのかもしれません。しかし、それは情報そのものの新しさではなく、「切り取り方の新しさ」に過ぎないのではないかと思います。

そこで、かなり大胆ですが下記のような考え方で、いままでの情報蓄積モデルは間違っており、情報量は不変なのでは?という若干意味不明な理論を展開してみます。

情報量は実はむかしから不変だったのではないかという疑い

ここで、いったん今回主張する考え方を説明するための図を示してみます。

「情報の雲」と表現した部分は、ありとあらゆる情報の本体であり、人類は記録メディアを持ち始めてからそれらを石版、紙、活版印刷などに延々と記録し続けてきました。しかし、今はそれらがネットワークを通じて共有可能になり、誰もが発信できる上、営利企業に支えられているとはいえ短時間で大量の情報を検索することや、その切り取りや最構築(まとめ)も誰でも簡単にできるようになってきました。このような時代においては、これまでの情報の概念からシフトして、ちょっと違う情報に対する概念を持ってみてもよいのではないでしょうか?

このような考え方をなぜTumblrから連想したかというと、いくつか理由があります。まずTubmlrにはタイムラインはありますが、日時やリブログ数などがあまり重要な指標として利用者の目の前にあらわれてはいません。重要なのは、今目の前にどんな情報があるか、というだけに過ぎないからです。ほかにも「ポータル」としてのトップページはなく、自分はフォローした相手が切り取ったものしか、そこに存在しないということです。世界に対していったん目隠しをされて、そこに針の穴を一つずつ通していくような情報の見え方を、Tumblrは体感させてくれます。目隠しているため、相手がいったいどのような大きさでどのような量あるかはわからず、それはまるで雲のようにぼやけて感じますが、穴の数はどうやら有限で数えられるように思えるのです。

さて、図の中の文字部分を書き出しますと、下記のような感じです。

これまでの情報の考え方(情報はどんどん増加する)

・情報はどんどん生まれ、新しいものほど大きく見える
・押し寄せる情報を選び取るためにキュレーションが必要
・古い情報はアーカイブとして蓄積することができる

Tumblrから連想した情報の世界観(情報の量は普遍的)

・情報はあらかじめ一定で、我々はその断片を随時見ているに過ぎない
・情報に新しいとか古いとかはなく、ただその切り取り方の違いがあるだけ

…この考え方によると、新しいことに価値があるのではなく、
その切り取り方に価値があるのではないかという話になります。

ここを錯覚させることで、昔からある情報をあたかも新しい情報のように見せかけて人々に摂取させようというケースも、ときおり見かけるような気がします。たとえばブログやメルマガ、はてなブックマークの注目記事や、2ちゃんねるのまとめ記事など、新しいように見えて「どこかで見たことがあるなあ」というものが多くありませんか?

古くて価値のない情報に惑わされないためには

新しい考え方では、切り取り方が同じであれば、日付が新しいだけの情報を提示するのは一種の情報価値の偽装でしかないのではと考えます。では、そういった情報に振り回されないためにはどうしたらいいでしょうか。

1.時系列のアルゴリズムで情報が掲載されるポータルを使わない

はてなブックマークTogetterのように、時系列のアルゴリズム(新しいものほど上位にランキングされる)ポータルを使うのはできるだけ避けるべきかもしれません。かといって代替はないのですが、それであればまだ時系列+フレンドフィルタリングされているはてブの「お気に入り」ページの方が、もうすこしマシかもしれません(※ちなみに、はてなブックマークで自分のお気に入りページにアクセスするためのURLは次のようなフォーマットになります http://b.hatena.ne.jp/(自分のID)/favorite)

今後これらのサービス自身がが時系列のアルゴリズムを改めるかどうかはわかりませんが、当面はこれらのポータルがPVを集めやすい現状の形態を変更するとは、とても思えません。広告モデルでやっていればそれは大きな収益構造のリスクを伴うこともあるからです。また、冒頭で書いたようにTumblrにもタイムラインはあるので、必ずしも情報の入口として最適なサービスかどうかは、まだわかりません。

2.CGMコンテンツをまとめる「キュレーター」に報酬のあるまとめサービスを避ける

アフィリエイトでシノギをしているまとめブログや、楽天レシピNAVERまとめのように、まとめる側にある程度満足できるインセンティブが発生することを公言しているサイトは、長期的に見て利用者に不利益をもたらす可能性があります。理由としては長くなったのでおもに4.の項目に移動しましたが、簡単にいえば「PV至上主義」にその問題の一端があります。

多くの場合、PVやUUがインセンティブに変換される仕組みになっているため、PVを集めるための過激な表現、他サイトとのパクリ疑惑などは日常茶飯事です。さらには、アクセス数のために事実と異なる情報を意図的に乗せて逮捕された例もあります

「クビになっても食べられる」 アフィ目的に1000のブログ運営、江別の不動産屋を中傷した小学校講師 (1/3) - ITmedia News

3.自分の中に「情報の重複をチェックするためのアーカイブ」を作る

自分のブログやGoogleサイトでもよいし、例えばEvernoteのような自分の記憶をバックアップ(支援)してくれるツールを持ち、重複した情報はプライオリティを下げられるように対比のリストを作っておく。同じ情報を価値があると認めてしまうのは、自分の蓄積したアーカイブを十分に活用できていないという問題を露見させている。

逆にEvernoteで自分がメモしたものと、自分が既に持っているものをマッチングできるウェブブラウザ拡張機能とかあれば、かなり私たちを手助けしてくれるかもしれません。大事なのは、情報ではなく情報の視点をアクチブな状態で保持しておく方法です。

4.情報量よりも情報の取り出し方を重要と考え、役に立たない情報の量産を防ごう

もし、情報量が不変という立場に立てば、目の前に現れた情報は既に自分も知っている情報の切り口を変えただけのものと考えることができるようになるかもしれません。そうすることで、情報の対象に対する過度な評価を避けることができるはずです。しかし実際には過度に評価された分をウェブメディアを使ってマネタイズに成功している企業があります。デマンドメディアと呼ばれるeHowと呼ばれるサイトも、情報の質は落として数を用意しています。もしかしたら同じ情報をなんども新しく掲載するスキームも持っているかも知れません。

残念ながら、既に情報の質が落ちまくっているジャンルがあります。それはウェブにおける健康と医療に関する情報です。現在ウェブで健康や医療に関する情報を調べようとすると、どんな病気でも一定の割合で健康食品や実際に効果のあるかわからない療法が掲載されたページ飛ばされます。本当に健康状態を改善したりや医学的な治療を受けたければ、お医者さん(あるいは病院)単位で探して実際に施設や病院に赴くほうがよほど正しい情報にたどり着きやすいでしょう。

安易なデマンドメディアによる低価値情報の氾濫の危機

そして今は、それ以外のあらゆるジャンルで無駄な情報を生産させ、消費させ、トータルで得られたトラフィックをマネタイズしようというサービスが多くあります。その結果、それらのサービスが検索エンジンの上位のドミナントとなったとき、我々が手にするのは、大量の、どこかで見たことのある、少し昔の情報ばかりになってしまいます。昔はあっさり辿りつけたプログラミングの情報源よりも前に「初心者が今から○○プログラミングをするために必要な50のTips」みたいな情報に遮られる未来が来たらどう思いますか?

今ぱっと見そういった情報に飛びつくことは、なにか参考になるかもしれないという期待ももてるかもしれませんが、なんどもなんども同じ情報に飛びつくことは、やはり長期的にウェブをより不便なものにしていくと思うのです。それを防ぐためにはやはり、情報そのもののアーカイブではなく、情報を切り取るやり方が大事だと考えます。

まとめ

かんたんに、この記事で訴えていることをまとめてみます。

・アーカイブに価値を見出さず、切り口を重要と考えよう

・「後で見る」ための空メモや空ブクマはやめて、情報を取り込むときに判断できるようもう少し努力

・新しく見える記事でも過去に同じ内容がなかったかどうかをチェックする視点を持とう

・既に取り込んでしまった情報は、手段が用意されていればできるだけ整理しよう

さらにつけくわえるとすると、自分から情報を発信するときも、新しく「情報を生む」のではなく、情報の雲から「情報を切り出す」気持ちでアウトプットしてみるのもいいかもしれませんね。

情報が無限に生まれてくるだと考えてしまうと、できるだけ自分の手元にストックしてとっておきたいと考えてしまうかもしれません。しかし、情報は有限でその総量は一定であると考えれば、それを必要なときに必要な切り口で取り出せばいいと考えられるようになるはずです。

そうすることで、たいして違いがないのに新しいだけの情報を重宝したり、また価値の低い情報で人を集めようとしたりする状況を少しは減らせるのかもしれません。

(追記)

今回話のとっかかりにしたTumblrですが、かなりPVが伸びているそうです。

創設者インタビュー:Tumblrは毎週2億5000万ずつページビューを拡大中

Twitter、Facebookというわかりにくいものがヒットしつつあるのなら、Tumblrも案外いけるでしょうか?2011年の後半、Tumblrが伸びてきたら、またウェブというメディアのかたちが、少し変わるのかも知れませんね。

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