2022年5月3日、Firefox がバージョン100に到達しました。Webのユーザーエージェントでこれほど大きなオープンソースプロジェクトは他にそうそう類を見ないものであり、ネット文化における偉業の一つといっても差し支えないのではないかと個人的には思います。
しかしながら、先日のブログエントリで取り上げたように、Firefoxを推奨環境のしない動きが少なくとも国内サイトで確認されはじめているようです。しかし、こちらもその後動きがあり、「2022年4月15日付けで、J-STAGEの動作確認済みブラウザにFirefoxが追加、IE11が削除されました」という内容をお寄せいただきました(情報提供ありがとうございます🙇)
しかし残念なことに、NHKプラスというNHKの動画配信サービスでは、2022年5月23日からFirefoxでは動画が再生できなくなるというアナウンスを行ったもようです。
Firefoxはこちらの2006年のドキュメントにあるように、Web標準準拠のためのリファレンス実装となることを目指しており(現在もその意志が引き継がれているならば)、Firefoxでの動作確認をもとに、個別のウェブブラウザとの実装の差異を確かめていくという業務フローを構築することが最も効率が良くなるはずです。
しかしながら、ビジネス上の判断からなのか、PayPay銀行のようにセキュリティリソースを集中させるためなのか、NHKプラスでは動作対象外とするだけでなく「動画再生を出来なくする」という対応を発表しました。これは不必要な締め出しであり、リファレンス実装としてのブラウザが排除されるということは、エンドユーザだけでなく開発者に対しても不便を強いる結果になっています。
たしかに、動画配信事業者は視聴者のことを最も優先的に考える必要がありますが、インターネット上の共同体に参加している以上、それを作り支えるデベロッパーに対しても優しくあってほしいものです。
また。ビジネス的な側面からも心配な側面があります。Netflix も、 Amazon プライムも対応ブラウザにFirefoxを含めています(Netflix の対応ブラウザ、Prime Videoシステム要件)。数字上で見れば確かにFirefoxのシェア率は低いかも知れませんが、それを利用者数に換算すれば、それはけして少ない数ではないはずです。この点で、自らビジネス的な機会を毀損してしまう可能性があるでしょう。
また、災害情報や生存に関わる情報を必要とするとき、万が一Chtome、Safariなどの主要な閲覧方法が非常事態化で一時的に利用できなかった場合、代替としてはFirefoxのようなオープンソースプロジェクトベースのブラウザが選ばれ得るのに、あらかじめその利用を締め出しておくことは、本来届けるべき情報から人々を遠ざけてしまうことになるのではないでしょうか。
今回の新しい情報をもとに、低いブラウザ互換性を表明したウェブサイトリストをアップデートしました。リスト上ではたった一行ではあるもののその影響力・存在感からすれば、なるべく幅広いWebブラウザにコンテンツ到達の機会を与えてくれるよう、ご再考いただくことを願って止みません。
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